小説は第8回山本周五郎賞を受賞し、2019年には映画化(※2度目)された帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)の『閉鎖病棟』。(※映画版タイトルは『閉鎖病棟-それぞれの朝-』)
映画は笑福亭鶴瓶、綾野剛、小松菜奈という豪華キャストだったので、気になっている方も多いと思います。
小説と映画どちらも拝見したので、感想や小説版(原作)と映画の違いなどを含めて解説します。
映画隔離病棟-それぞれの朝-のスタッフ・キャスト
監督は2016年公開の岡田准一主演『エヴェレスト 神々の山嶺』を撮った平山秀幸。キャストも豪華で実力派の俳優さんがそろっています。
- 監督・脚本:平山秀幸
- 梶木秀丸:笑福亭鶴瓶
- 塚本中弥 (チュウさん):綾野剛
- 島崎由紀:小松菜奈
- 重宗:渋川清彦
- 丸井昭八:坂東龍汰
- キモ姉:平岩紙
- ムラカミ:綾田俊樹
- ダビンチ:森下能幸
- ハカセ:水澤紳吾
- テッポー:駒木根隆介
- フーさん:大窪人衛
- オフデちゃん:北村早樹子
- おジギ婆さん:大方斐紗子
- ドウさん:村木仁
- 由紀の母:片岡礼子
- 由紀の父:山中崇
- チュウさんの母:根岸季衣
- 酒井弁護士:ベンガル
- 大谷:高橋和也
- 石田サナエ:木野花
- 井波:小林聡美
- キワちゃん:佐藤もみじ
映画・小説隔離病棟のあらすじ
長野県のとある精神科病院では、さまざまな人生を背負った患者が入院・通院している。死刑執行が失敗し、無罪放免となった梶木秀丸(笑福亭鶴瓶)、幻聴に悩まされるチュウさん(綾野剛)、父親の虐待に苦しむ島崎由紀(小松菜奈)など。しかし、世間や家族に疎まれながらも明るく前向きに日々を生きていた。
表向きは平穏な生活が続いていくように思えたが、ある悲惨な出来事をきっかけに、事態は殺人事件にまで発展してしまい…。
小説・隔離病棟の感想
前半は、それぞれの患者が精神科病院に入院するまでの人生が、細かく描写されています。時代の背景描写がとても詳しく、非常に興味深く読めました。
作者の帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)は、現役の精神科医だけに病院内の患者や看護師の行動にリアリティーがあり、本に説得力を持たせています。ただ、全体的に暗い話が続くため、一気に読むのはしんどいです。
症状が軽いため病院と外の世界を自由に行き来できるチュウさんの視点から、精神病院という存在(その中にいる患者も)が社会的に受け入れられていない現状がわかりやすく、そのことが一層悲しい気持ちにさせます。
物語の主軸となっている病院内での殺人事件についてですが、(フィクションとはいえ)精神病院の中ですらずる賢い悪人は好き勝手にのさばり、結局、損するのは正直者という弱者となることに大きな絶望感を覚えました。
秀丸の行動は『誰かの幸せは誰かの犠牲を持ってしか成り立たないのか?』という、究極の問いを読者に投げかけます。自分は、他人の幸せのためにどこまで犠牲を払うことができるか?と非常に考えさせられる作品です。
また、誰にも変えられない非情な現実があるからこそ、人は一人ではなく、誰かと力を合わせることが大切だともこの作品を読んで感じました。
万人に受ける作品ではないでしょうが、生きることに悩んでいる方におすすめの一冊です。
映画・隔離病棟-それぞれの朝-の感想
映画は、時間の都合もあるでしょうが、秀丸(笑福亭鶴瓶)、チュウさん(綾野剛)、小松菜奈(島崎由紀)の人生にフォーカスされています。全体を通して映像がやや青みがかっていて、病院独特の不健康な雰囲気を出しているのが印象的でした。
チュウさんが街の人から奇異の目を向けられ、『坂の上の人』と揶揄されるシーンがあるのですが、現実にもある差別がリアルに表現されており、患者達の社会の誰にも受け入れられない孤立した状況に色々と考えさせられます。
ストーリー展開がよく工夫されており、合間にショッキングなシーンをはさみながらテンポよく話が進むので、結構あっという間に観ることができました。
笑福亭鶴瓶(秀丸)の演技は素晴らしく、穏やかさの中にどこか悲しげな感情が見え隠れする演技はさすがです。
綾野剛演じるチュウさんは、小説を読んでいると少し若すぎるかな?とも感じましたが、いつも穏やかで優しく“柔らかい人”という雰囲気を上手く出しており、映画のストーリーテラーとしての役割を起用にこなしていました。
小松菜奈のどこか虚ろな、何を考えているかわからない演技も役にフィットしていたと思います。小松菜奈演じる由紀が、ストーリーの鍵となっているのですが汚れ役も体当たりで演じており、これからに期待できる女優さんだと思いました。
『渇き。』でもインパクトが強い役でした。
おどろおどろしい重宗(渋川清彦)の存在感が強く、平和な日常に突然現れる脅威として空気をひりつかせていたのが、いい伏線となりストーリーに引き込まれます。
殺人事件が起きてからの病院のやや他人事のような対応は、現代社会の闇の部分を感じさせます。秀丸の裁判のシーンでは、小松菜奈と笑福亭鶴瓶の演技に胸が熱くなり感動しましたね。
ラストシーンは、ネタバレになるので詳しくは書きませんが、秀丸が絶望感で押しつぶされそうになるのを、必死でもがいているように見えました。
ただ、あまり他の患者の背景や関係性が描かれない割に登場人物が多いため、途中で『この人誰だっけ?』と思うシーンもあり、中盤の各々が芸を披露するくだりが少し長く感じてしまったのが残念です。
映画隔離病棟が観られる動画配信サイト
映画『隔離病棟』は以下の配信サイトで視聴可能です。
・レンタルで視聴可能⇒AmazonPrimeビデオ
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※本ページの情報は2020年8月19日時点のものです。
最新の配信情報は各配信サイトでご確認ください。
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